Love the Moment

日原いずみ

大人たちへの(お子さんも)クリスマスプレゼント🎁🎅✨

 
12月25日 投稿分

 
作家の言葉をまるまる載せることはもちろんふだんはしないけれど、著作権が消滅している宮沢賢治さんの言葉より。
昨日ある件でやり取りした目上の女性が、私の言葉から連想した宮沢賢治さんの言葉を教えてくれました。それは、「すきとおったほんとうのたべもの」。これを検索する中で、恥ずかしながら初めて読んだ、『注文の多い料理店』の序文(『注文の多い料理店』は大好きです)。
言葉も情景も美しくて、いろいろ共感して、涙がたくさん出ました。
私も、誰かの「すきとおったほんとうのたべもの」になるものを届けられるように、心を込めて書いたり、話したりしていきます。
🌟日付もちょうど今頃の文章です。澄んだ冬の空気を感じながら・・・(なるべく慎重に探したけど、ネットからの文章なので、そもそも仮名づかいは違うけど、本で持ってる方からしたら違う部分があったらすみません)
 わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
 わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
 ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。
 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。
  大正十二年十二月二十日
         宮沢賢治