Love the Moment

日原いずみ

20年前に住んでいたマンションと、管理人さんへのハガキ

 

昨日、我が家の郵便箱に、宛先不明で戻ってきた暑中見舞いのハガキが入っていた。

 

見ると、夫が書いたもので、20年前に住んでいたマンションの管理人に宛てたものだった。

住所は管理人の自宅ではなく、マンション。


そのマンションには当時、管理人用のポストがあったので、そこに入れてもらえたらと思ったのだろうけれど、確かに戻ってきても仕方がない。

文面を見ると、マンションの定礎20年へのお祝いと、自分たちが新婚時に新築のそのマンションに4年住んだこと、そのマンションの入居時に生まれた長男次男が大学生と高校生になったことなど、丁寧な内容だった。

 

無愛想な夫がそんな粋なハガキを書いて出したこと自体に驚くと同時に、そのくらい彼に思い入れがあったのもわかるし、その管理人がまた熱心な方だったので、ハガキを出したくなるのもわかるなあと思った。

 

そのハガキを夫に返したら、そのままで終わりになりそうだったので、私が預かり、夫にも伝えて、今日出かけたついでにマンションに寄ってきた。

 

20年前と管理人が変わっていなければ管理人用のポストがあるだろうと思い・・・

 

ドキドキしながら久々のマンションに行くと、当時と同じ管理人用のポストがあったので、玄関ホールの隅で、ハガキに言葉を添えるシールを準備していたら、釣りに行く準備を駐車場の車でしていた明らかに住人と思われる若い男性が入ってきた。

 

「すみません、私、このマンションに以前住んでいた者ですけど、管理人さんは、今も〇〇さんですか?」
「そうですよ」

 

とのことで、経緯を説明し、夫のハガキを管理人ポストに入れさせてもらった。

 

その男性が言うには、20年経った今も内部がきれいだそう。

「きっと、管理人さんが熱心だから、きれいに保ってきたんでしょうね」とお伝えし、

私が過去に住んでいた部屋を「5Cです」と伝えたら「ぼく、5Bです!」と(笑)


当時、その管理人さん(たぶん当時50歳前後)は、自分が初めてオーナーになったマンションだととても喜んでいて、建物へのこだわりをうれしそうに話してくれた。

 

熱心に掃除をしていたし、社宅ではなく知らない人同士が住んでいるマンションなのに、バーベキューを企画したり(我が夫婦は参加したことがなかったけど)、とにかく努力していた。

 

夫はそのマンションのリビングを参考にして、今の一戸建ての設計に活かした。

 

ほとんどが新婚さんで、それが私には気持ち悪く感じる時もあった(笑)

 

幸せもいっぱいだった。

苦労もいっぱいあった。

 

新婚の頃は毎晩夫と赤ワインを飲んでいた。

友達もたくさん来てくれたし、たいてい夫の料理でおもてなしだった。


長男が2歳くらいの頃、ベランダで洗濯物を干していたら、長男が窓のカギをかけてしまい、私が部屋に入れなくなった。

それまでカギをかけることなどできなかったので、「まさか」だった。

そのカギを長男が開ける(戻す)、ということができるのかわからなくて、10分くらい困惑したけど(長男は家の中で涼しい顔で遊んでいて、ベランダの私の頭の中にははしご車とか出てきたし、玄関のカギを壊して入ってくるのかなとか想像~)、私がしぐさで「カギを開けて」と何度もお願いしたら、ひょいと開けてくれた(笑)

以来、洗濯を干す時は、大きな窓のカギを二つとも開けてから干すようになった。

 

夫婦げんかで夫があけた壁の穴があり、マンションを出る時に、管理人さんに正直に「私があけました」と話していた姿も憶えている(笑)

 

たった4年だけど、思い出深いマンション。

 

2冊目の小説の『赤土に咲くダリア』に書いた生活の頃です。

 

今もきれいな、築20年のマンション。

 

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子どもたちが大きくなり、最近、夫婦二人だった頃のことを思い出すことも増えた。

自分で小説に書いた言葉だけど

 

<家族は変容する>

まさにそう思います。

とりあえず、ハガキを届けられてよかった!!