Love the Moment

日原いずみ

『あちらにいる鬼』


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図書館への返却期限のために、最後は慌てて読んだ井上荒野さんの『あちらにいる鬼』。
父親・井上光晴瀬戸内寂聴の恋愛関係を中心に、寂聴さん(出家前、出家後)の視点、妻の視点など織り交ぜて、長年の、奇妙ながらも本質的な心の機微を描き、まとめ上げた小説。
この小説がスゴイのは、寂聴さんが存命の時に、直木賞作家でもある、井上さんの娘の手によって書かれたこと(帯は寂聴さんだった)。
吉行淳之介など、死んだ後に複数の愛人が書いちゃう、暴露本みたいなのはあったけど、娘が父親のことも、その愛人のことも、さらには母親のことも、フィクションとはいえ描き切ったのはアッパレだと思う。
荒野さん(その名前自体、井上光晴が名付けたおもしろさ)の作品は『ベーコン』くらいしか読んだことないけど、何回も読み返すくらいに好きだし巧くて、今回も、さすがだなあと感嘆するような表現や心理描写が多々。
いわゆる修羅場もあったんだろうけど、井上光晴が死に、妻が死に、生きながらえていた寂聴さんも昨年死んだ。
読み終えて感じたのは、「みんな死ぬ」というシンプルな事実。
もうずっと、世の中や人間を俯瞰して見る癖が抜けないというか、それが自分の当たり前になってるけど、死ぬという事実を具体的に自分にセットすると、つまらない枠や規制が消えていく。
小説に感動して泣きながら、同時に、自分の人生のこれからを考えた時に、私はまた書きたいよりは、新しいことがしたくなってしまった(笑)
3日前にシェアしたボクシングの村田諒太さんのコラムもこの先何度も読み返しそう(消える前に保管しておく)。
年末の出会いが出会いにつながり、そこから勝手に触発されて、ある治療に関する勉強を始めようと、本を調べたり、注文したりした。
有限の人生の中で、できるだけ知りたいし、楽しみたいし、これまでの苦労(私の場合は珍しい病気や感受性の良し悪し)を新しい何かにつなげたい。見えない力とか運とかも取り込むような、私だけの何か。
井上光晴を調べつつ、荒野さんをたどったら、誕生日が同じ2月4日とわかった。一回り違いなので、占い等も重なる。
前々からの不思議な共感に納得した。
同じ誕生日の代表的な人はキョンキョンで、この間のクリスマスのこの写真も大好き。
キョンキョンみたいに、いつまでもTシャツが似合うおばちゃん、おばあちゃんになりたい!
以下、興味持ってもらえる方は参考までに・・・
☆『あちらにいる鬼』文庫化、映画化のプレスリリース
☆晩年の井上光晴を追ったドキュメンタリー「全身小説家」(原一男監督 1994年公開)予告動画

www.youtube.com

 
全身小説家」は、上映時を憶えているけど観ていないので、観たことある方、感想教えて欲しいです。
原一男さんは、「ゆきゆきて、神軍」は観たことがあって(フランスに住んでいたアーティストから勧められた)、安冨歩さんが豊橋に演説に来た時(馬を連れていた緑地公園)にも原さんがカメラ回していたんだっけ? 話しかけたらよかった(笑)