Love the Moment

日原いずみ

入院中に感動したこと ②

 

【退院の日のできごと】 *自分のための覚え書きで長いです。

 

今回の入院で、私は初日にかなり緊張していたと思う。

人やものごとに緊張することがあまりない方だけど、首の手術が恐くて(過去に別の手術も受けているけどその時は恐怖心がなかった)、緊張というか、気が昂っていたというか、とにかく、入院翌日の手術が無事に受けられるのかどうか、自信がなかった。

 

というのも、手術日(金曜)と同じ週の日曜日(5日前)には足の側面と裏側に湿疹みたいなものが急に出て、月曜日の診察後の夜には首の腫れ(手術のために意図的に腫れた状態を保っていた)からか発熱し、火曜日(3日前)は一日グッタリしていた。さらに、水曜夜には生理が始まったかも(それも2月に人生最長の間が空いたため予定通りにならなくなった)、という、ほんとうにほんとうに最悪の状態だった。

体調が万全の時に手術を受けたいのに、その手術への恐れからのストレス反応なのか、手術を終えたら消えていくことなのか、しかし肝心の手術は受けられるのか・・・

 

そんな状態で入院した時、耳鼻咽喉科の病棟でお世話をしてくれた看護師さんたちが明るくて、明る過ぎても気後れしたと思うけれど、その時は、「ただ明るく接してもらえるだけでこんなにも励まされるのか」とありがたく思っていた。

 

体調が悪いということはなかったけれど、病棟が想像以上に暖かいために熱が上がりやすい私は手術直前に微熱があったものの(先生方によって審議された)、無事に手術が受けられることになった。

 

手術前に付き添ってくれた男性看護師さんにも癒されたけど、①で触れた手術直後にお世話になった白衣の天使のような看護師さんには、今回最も助けられた。

 

全身麻酔から覚めた経験を持つ人にはわかってもらえると思うけれど、直後の数時間はかなり辛い。

酸素マスクをしていても、楽ではなくてむしろ違和感から「(マスクの外の)本当の空気が吸いたい!」になってしまう。

手術中に口から差し込まれていた管によって口腔内はカラカラだし、点滴やらいろいろな管は付いてるし、軽いパニックのような状態。

 

自分があっち側に行くのか、こっち側に帰ってこれるのか不安になってしまうのだ。

そんな時に、その白衣の天使にしか見えなかった看護師さん(若くて、とてもかわいらしい)が甲斐甲斐しく寄り添ってくれて、術後3時間は水分を摂ってはいけないので、せめてと口の中を湿らすうがいをお願いしたら快く介助してくれて、とにかく、仕事とはいえ、嫌な顔ひとつしない対応に、感謝の気持ちでいっぱいになった。

 

安静にする必要がある辛い辛い3時間は、意外にも美しい夕焼けのような情景がずっと頭に投影されていた。私は視覚の右から左へ動いていくようなその映像みたいなものを追い続けるうちに3時間が経った。

 

その看護師さんは夜の9時に交代で、交代後のベテランの看護師さんも素晴らしかったけれど、退院前に最もお礼を伝えたかったのは白衣の天使ちゃんだった。

 

術後二日目に、希望していた個室が空き、4人部屋から移ったものの、翌日、重篤な患者さんのために私の部屋を空けることになって、急に看護師長さんから「4人部屋か他病棟の個室に移っていただきたい」とお願いされた。

 

戸惑いながらも生理だったことが大きくて(部屋にトイレがある)、同じ科の病棟よりも個室を優先し、結果的に私は、違う階の産婦人科の、とても快適なシャワー付きの個室で残りの時間を過ごした。

 

しかし、別の科に移ってしまったため、お礼を伝えたかった白衣の天使に再会できず、退院前にお手紙を書いた(ノートを破って)。

 

私は元々手紙をよく書く方で、人生初の入院だった東京女子医大病院(*大学4年の夏休み)では、大部屋で一緒だった自分以外の7人?と主治医(若い女医さん)に手紙を渡して退院した。モットーとかパフォーマンスとかではなく、感謝を伝えずにいられないのだ。

島根医科大学病院に入院した時は、術後の一時期同じ病室になった帝王切開の産婦さんと、その後長いこと年賀状のやり取りをしていた。

 

産婦人科の個室で、退院の手続きを済ませ、あとは夫のお迎えと会計のみ、という待ち時間の間に、天使に向けたお手紙を持って、別の階の、元いた耳鼻咽喉科の病棟に出向いた。

ナースステーションで事務の人に天使ちゃんが今日いるかどうか尋ねたら、すぐそばにいた、私が部屋の移動を依頼された看護師長に話が行き、その日は天使ちゃんがお休みだとわかった。お手紙を渡して欲しいと伝えたところ、師長が出てきてくれた。

 

私が感謝の気持ちを話したところ、師長が思いのほか感激してくれて、彼女も天使ちゃんに期待をしていることなどを話してくれた。

「患者さんからのこういうお声は、(まだ勤続年数が浅い)彼女の何よりの励みになります」と。

私が上記のような天使ちゃんの素晴らしさに加え、耳鼻咽喉科の病棟の看護師さんたちの雰囲気が良かったこと、やさしくご老人の話し相手になって頭が下がるような思いがしたこと、初日に感じた「明るく接してもらえることでこんなにも励まされるとは驚いた」ということを伝えたところ、師長は涙ぐみ、思わず私の手をつかんでくれるほどに喜んでくれた。

 

「年数などで、スキルの違いはあっても、患者さんのために、それぞれにできることをするように伝えてきたことが、こうして患者さんから知らされて、私が言ってきたことが看護師たちに伝わり、実践してくれていることがわかって、本当にうれしい」

 

みたいなことを言ってくれた。

 

部屋の移動を言われた時のしっかりした師長さんの印象とは真逆なくらいに、顔をほころばせて自分の気持ちを話してくれて、ああ、師長さんも常日頃がんばってるんだよな、と、急に可愛らしく見えて、応援したくなった。

 

先輩看護師から指導される若い看護師たちも、先輩も、責任者も、みんながんばっている。

 

私のことをよく知ってる人からすると、またやってる、という感じかもだけど(笑)、感謝や感動、お褒めの言葉は伝えずにはいられない。

 

お節介なようだけど、大げさなようだけど、勇気を出して、一歩先に進んでみること、「伝える」というアクションを起こすことで、がんばってる人たちが報われて、さらなるやる気につなげてくれたら、その先にまた喜ぶ人が増えるわけで・・・

 

感謝や喜び、幸せの循環を、やはり私は大切にしたい。

 

その日はもう一つ、ふだんは入院病棟で受けられる退院診察(抜糸含む)が、手術等の都合で私の元々の主治医(執刀医)の外来まで出向くことになった。

入院病棟から、なじみの外来病棟に行き、無事に診察や抜糸を終え(もちろん、主治医に最大限のお礼を伝え)、中待合室で少し待つ時に、手術の報告やこれまでの外来のお礼を最も伝えたかった若い看護師さんが目の前の診察室からちょうど出てきた!

*相変わらずバッタリに恵まれる。

 

 「わ~~」とお互い言いながら傷を見てもらうと、「きれいきれい」と言ってくれて、

「会えて良かった、お礼を伝えたかった」と話すと

「実は今日で最後で、明日から病棟に移る」とのこと。

話すうちに、私が入院したまさに耳鼻咽喉科の病棟だとわかり、「雰囲気良かったよ!!」と伝えたら「緊張してたから教えてもらえて良かった!」と言ってもらえた。

見たことをちょうど伝書鳩できてよかった。

 

自分の年齢の変化もあり、看護師さんという存在への見方も変化する。

同じ年くらいの看護師さんはベテランの域で、若い看護師さんたちは本当によくがんばってるし、かわいい。なくてはならないお仕事の彼女たち(男性看護師が増えているのも良いことだと思う)には、これからもがんばっていただきたいです。

 

①も②も、今回の入院の忘れられない感動のできごととなりました。