Love the Moment

日原いずみ

「ユニチカ問題、正しく知ろう」チラシの検証原稿

〈先に念のため。表示される広告は自動で私の意向ではないです。フリーブログなので、私への報酬もありません〉

 

ユニチカ跡地問題へのチラシはこれまでに、

①「ユニチカ跡地問題ってよくわからないんですが?」豊橋新時代の会(←浅井さん側)

②「ユニチカ問題、正しく知ろう」あすの豊橋を考える会(←佐原さん側)

が配布されてきました。

今回は、②について検証する原稿を預かったので(作成者は「有志」で、①とは別の法的知識に詳しい方)、ご紹介します。

 

あすの豊橋を考える会 「ユニチカ問題、正しく知ろう」について

 

※太字はチラシの記述

もともと市の財産ではない

 

土地買収金額は豊橋市議会の議決を経たうえで、豊橋市がその全額を負担しました。だからこそ,豊橋市ユニチカとの契約で,豊橋市ユニチカに土地を無償提供する契約を締結したのです。豊橋市は他人の土地を無償提供する契約を締結したわけではありません。

登記簿に載ってこないのは、豊橋市が「中間省略登記」を行ったためであると考えられ、この手法は、当時は時間と費用を節約するための実務的にはめずらしくない手法でした。

つまり契約上は豊橋市の財産となったものをユニチカに無償で譲渡したのです。いったんは市の財産になったからこそ、土地譲渡契約において返還規定が設定できたわけです。一度も所有権が生じなかったものを返還させることなど不可能ですし、そうだとしたら、そもそも今回の問題が起きる余地はなかったのです。

裁判でもユニチカの契約違反の有無のみが問題となっており,登記が豊橋市を経ているか否かは全く問題となっていません。

登記と所有権は別物です。登記されていないから所有権がなかったとするチラシの記述は誤りで、印象操作としか言いようがありません。

 

ユニチカから使わないと意思表示された部分は返すという契約だった

契約の目的に沿って使用された土地かどうかで認識に差があった

 

裁判の中で、土地返還規定についての豊橋市の主張は変化しています。

一審において、豊橋市は最初に「返還規定は一部の土地に関する定めで、土地の全面放棄は想定されていなかった。全面撤退の場合はこの規定の適用はない」と主張しました。

次に、「契約したときには稼働状況が定まっていなかった。稼働状況が定まるまでの規定である」と主張しました。

さらにその後、契約後の経緯から「返還規定は事実上失効している」という主張を追加しました。

そして、これらの主張はすべて裁判所に否定されたのです。

二審では、「当初使用計画が定まっていなかった2万坪余りの土地返還について規定したもので、その後第2工場を建設したことにより未利用の土地はなくなったため、返還すべき土地はない」と主張しました。

裁判所は、豊橋市の主張を「返還規定は、本件各土地全体を対象としていたものと解するのが相当」として否定しました。その一方で、操業を廃止した部分すべてを返還対象とすると、ユニチカに極めて大きな影響を与えることになるのでその解釈は取りえないと判断し、独自の解釈で「使用する計画を放棄した部分」の土地を認定し、一審の判決から金額を減額してユニチカに請求することを豊橋市に命じたのです。

ユニチカ裁判を通じて一貫していたのは、「豊橋市ユニチカに対して1円たりとも請求できない」という豊橋市の主張です。

 

当事者の豊橋市ユニチカは契約通りだったと認識している

行政は損・得だけで動いてはいけない

 

当事者であるユニチカは、契約通りだったと認識していた可能性はあります。

「当事者である豊橋市」とあるのは豊橋市長という意味ではそうかもしれません。しかし、豊橋市=豊橋市長ではないのです。多くの豊橋市民や何も知らされなかった豊橋市議会はそうとは言えないはずです。

そして裁判所も「契約通りだった」と判断せず、契約に背いて土地返還を行わなかったとしてユニチカ不法行為を認定しました。これが最高裁で確定した司法の結論です。

豊橋市長が契約にしたがって返還を求めなかったことで、ユニチカが土地を返還せずに第三者へ売却するという不法行為が生まれたのです。つまり、裁判所が認定したユニチカ不法行為豊橋市長が招いたものと言えます。

豊橋市と同時期にユニチカが進出した総社市のように議会関与の下,土地の一部(数億円分)の返還を受けるといった和解的解決を模索していれば,ユニチカ不法行為も生まれなかったと考えられます。

行政は損得だけで動いてはいけません。約束が大事なのはその通りです。自分が約束を守ることも大事ですし、相手に約束を守らせること、つまり契約の履行を求めることも同じくらい大事なのです。

 

市長が独断でどうこうできるものじゃない

 

 市の財産の処分は市民の代表である市議会がその権限を持っていますが、市長はこの件について市議会にはまったく諮っておりません。仮に株式会社の場合、雇われ社長が会社の重要な財産の処分を取締役会にも諮らずに実行し会社に損害を与えたとしたら、その目的によっては特別背任罪に問われます。意思決定のプロセスは非常に重要なのです。

市長の独断でないとしたら、市長部局という組織の合理的判断ということでしょうか。その意思決定が行われた会議録は情報公開において黒塗りされていて内容は不明です。独断でなかったとしたらそれを公開すべきです。

司法の場でユニチカの土地返還義務とそれを行わなかったことに対する不法行為が認定されましたが、それを議会にも諮らず容認した経緯を、市長は市議会や市民に説明すべきと考えます。

(了)

 

 **********

裁判が終わったから、この問題を争点とするのはおかしい、という佐原さんの支持者からの声もありますが、

裁判が終わった=市長が市民に説明しなくてもよくなった

裁判が終わった=市民が納得した

というわけでないことは、選挙の結果に関わらず、認識していただきたいです。